ウェブアーカイブ:第2回HiFサロン(FENICS共催)「フィールドで、性被害に遭ってしまったら」

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Q15. 学生をフィールドワークに送り出す側として、ピルに関しても、どういう風にサポートしていったらいいでしょうか。

椎野(オーガナイザー)
 やっぱり今日いらっしゃる方たちの中でも、学生さんと送り出す側の教員の人とが混じってるんですけども、もしもということで、学生さんとかフィールドに行く側も、送り出す側も、たとえばピルを常時で持っていって使い慣れているんだったらそれはいいんですが、そうじゃない場合に、ピルを普段から使ってなくて、さあフィールドに行く時に使うってなると、フィールドワークってまた新しいところで色んな思いがあると、常時やってるといいけども忘れてしまうってこともあるかなと思ったりします。また、その費用の問題っていうのもかなりありますよね。どういうふうにサポートをする側はしていったら良いのかなというのがありますよね。8,000円からということで、緊急避妊ピルの場合はかなりかかりますね。

吉野先生
 高いですよ。だから低用量のピルを普段から、これはもうフィールドに行く行かないに関わらず、今妊娠したくなければ全ての女性に飲んでほしいと思うんです。なるべく早くから飲んでいれば慣れてますし、海外に行ったからって別に慌てることもないし。海外でもっと安く買えるのであれば、東南アジアなんかもワンコインくらいで買えますから、タイとかだと手に入るはずです。だからそういうのを利用するとか、普段からやっぱり使い慣れるっていうのが(大切です)。だからフィールドワーク行くからじゃあ飲みましょうじゃなくて、これはもう普段から使っていただきたいものなので、ぜひぜひ。

 あと、産婦人科医をホームドクターにもって欲しいっていうのは、若い方に本当に言いたいことです。どうしてもお産のために行くところって思ってる方がまだまだ多いんだけど、そうじゃないんですよ。私たちは女性の一生に寄り添うホームドクターだと思って仕事してます。思春期から始まって成熟期、更年期、老年期とずっと、ホルモンの動態によってかかりやすい病気も違えば必要な検査も変わってきますし、医学もアップデートしてますから、10年前20年前とは違う薬もどんどん出てきています。それは婦人科にアクセスしてもらわないとわからないことだと思いますのでね、普段から行きつけの産婦人科医をもってると、そこでピルなんかも出してもらったりしながら、「今度フィールド行くんですよ」、「どこどこに行くんですよ」、「ああそこに行くんだったらピルはもっと安いかもね」とか、ある程度そういう情報もありますし、こういうこと注意しないとねとか、そこで改めて話もできるかと思います。やっぱり、ちゃんとかかりつけの婦人科医をもつっていうのは大事ですね。

 今、子宮頸がんなんかもすごい増えてるので、頸がんの検診を若い方は1年に1回必ず受けていただきたいんです。まあ性交経験ない方は1年に1回じゃなくても良いけれど。2、30代の方が子宮頸がんで毎日毎日10人亡くなっているんですよ。これは新型コロナウィルスより大きい数字なので本当怖いんですけれど、20代30代が検診になかなか来てくださらない。ピルもなかなか20代30代に普及してないんです、現状ね。海外だともう、ヨーロッパなんか50%以上普及してるんだけど、日本では確か発売して20年経ちましたけど、7%くらいだと思います。普及率がすごく低い。それだけ本当に、女性の健康いろいろこれから気をつけなきゃいけないこといっぱいあるのに、何でピル飲まないのかなって、本当思うんですけど、ピル使ってる子たちは本当に賢く大学生から社会人になってもピル飲んでて良かったっていうようなことは、よく話します。是非偏見じゃなくて正しい知識を持って、普段から自分の身体を守るっていう意味で、そういうものを上手く使って産婦人科にも気軽にアクセスしていただけたらなと思うんです。

 ただなかなか、日本の医療は本当に遅れてるので、産婦人科医もどこに行ってもみんな同じかって言うとそうではないんです。産婦人科医のなかでもピル反対派みたいなのもまだいるし、なんだそんなもの飲んでるのかとか、それこそセクハラとかね。もう医師の世界でも、セクハラとか横行してますからね本当に、パワハラとかセクハラとか。つい最近も、外科の医者が手術した女性の胸を触ったとか舐めたとかいって裁判になってますけど、本当に最低の世界です。日本は本当パワハラセクハラの温床ですから、もっと女性たちは怒って良いと思うんですね。冗談じゃないと。本当に「NO」はバンバン言って良いと思うし、そういうのはやる方が圧倒的に悪いので、こちらは全く100%悪くはないので、被害者が悪いみたいな文化は本当になくしていかなきゃいけない。MeToo運動とか広まりつつありますけど、まだまだなのでね、やっぱりみんな一致団結してもっと大きな声をあげて、嫌だってNOって言わないといけないし、セクハラ、パワハラ、性暴力をふるう輩を一掃しないといけないとは思ってます。

 

Q16. たとえば途上国のマラリア流行地域に渡航する際、マラリア予防薬と低用量ピル、または緊急避妊ピルの飲み合わせに問題はありますか?

吉野先生
 ピルっていうのは、そもそもがさっき言ったように黄体ホルモンと卵胞ホルモンの合剤ですから、抗生剤ですとか鎮痛剤ですとかと、身体の中に元々ない成分を入れるわけじゃないので、大体のお薬は一緒に飲めます。一緒に飲んで重篤なことになるなんてものはないです。

 ただ、相互作用といってピルの効果を弱めたり、相手の薬の効果を強めちゃったりっていう作用があるものはいくつかあります。たとえば、一般の人がたまに飲むとしたら抗生物質ですね。抗生物質のペニシリン系のものは、1週間以上飲むとちょっとピルの効果が薄れる、だから避妊の効果が薄れたりとかね、そういうことがあります。ステロイドとピルを併用すると、ステロイドの効果を強めちゃうので、その場合はそっちの量を調節していただければ良いだけので、一緒に飲めない、これは絶対一緒に飲んじゃ危ないっていう薬は基本ないです。

堀江(司会)
 なるほど、ステロイドのほうはステロイドを強めてしまうってことですね。

吉野先生
 そうです、いくつかそういうのがあります。

 

Q17. ピルを飲む教育は学校で行われているのでしょうか。中学・高校でそういった教育があると良いのではと思いました。

吉野先生
 そうなんです。だから私たちも中学校・高校に行ったりしてお話をしていて、私、今東京都産婦人科医会の学校保健担当理事というのを、今年で6年目ですけどやっております。東京都は教育庁と連携して、都下の都立高校に、まあ手上げ方式で希望した高校なんですけど、そこに産婦人科医を派遣してこういうお話をするっていうのを20年くらい前からずっとやってるんです。ですけど、都立高校もすごい数が多いですし、産婦人科医の数もそういるわけじゃないので、中でも性教育をやろうって医師も少ないので、ひとりで何校も掛け持ちしたりしてはやっているんですが…。

 去年(2020年)はやっぱり新型コロナウィルスで講演会ができなくなっちゃったので、中学校にはDVD作って配ったりしたんです。これから出向いて体育館で講演するみたいなことができるかどうか、ちょっとわからないですけど、一部、少しずつやっています。ただ、系統だててばっと全部にやるってことはできていないです。それができてるのは地方のほうで、青森とか佐賀とかそれこそ富山とか、やっぱり医師会が動いたり学校医の先生方が動いたりして、県下の全高校に必ず一年に一回講話に行くみたいなシステムができているところもあります。東京はやはり広すぎるのでなかなか難しいですね。

 

Q18. カウンセリング、相談する場所についてお話がありましたが、英語や中国語で相談できるセンターはあるでしょうか。

吉野先生
 センターというのは特にないと思うんですけれども…わからないけれど。一応英語は、うちは対応しますっていうふうになってますけど、中国語とかはちょっと難しいかな…実際もうこちらに来て住まれている方で、韓国系の方、中国系の方というのは結構いらっしゃるし、英語圏の方よりもフィリピンとか韓国とか中国の方のほうがうちの中野区なんかは多いかと思うんですね。旦那さんが通訳になって連れて来たりすることや、長く日本に住んでいるお友達が通訳について来たりとか。あと今通訳のマシンありますよね。あれを使ったり。東京都は電話相談すると、それで通訳の機械を使ってるんだと思うんですけど、それで翻訳サービスがあるみたいです。

堀江(司会)
 それは、性被害に遭った場合に相談するセンターにあるということですか。

吉野先生
 性暴力のセンターは、基本外国語対応はしていないと思います。日本のセンターは日本語だけなので。中にたまにちょっと英語できるとかそういう方がいらっしゃれば、対応してくださると思うんですけど、必ずできるわけではないと思います。

 

Q19. 低用量ピル2、3粒が緊急避妊ピルの代わりになると聞いたことがありますが正しいですか?

吉野先生
 そうですね、はい。4錠4錠。昔のヤッペ法という気持ち悪くなっちゃうよと言ったやつですけど、あれと同じ理論で、さっきのファボワールとかであれば4錠4錠かな、12時間あけて2回飲む。それで代わりになりますけど、でも普段からちゃんとファボワールでもなんでも飲んでる人は必要ないです、緊急避妊は。低用量ピルあるんだったら、それは緊急避妊の必要はないってことです。でも、もちろん、代わりにすることはできます。

 

Q.20 海外ではピルが安価で入手しやすいとのことですが、乗り換えのターミナル空港・ハブ空港、シンガポールやドバイなどのドラッグストアなどでも購入可能でしょうか。

吉野先生
 空港のドラッグストアに置いてるかどうかはわからないなあ。どうだろう。あまり空港で買ったっていう人の話は聞いたことないですけどね。

椎野(オーガナイザー)
 みんなで聞いてみたらいいですね。

吉野先生
 そうそう、調べていただいて、データ集めたら良いと思いますよ。ここはあったとかここはなかったとか。ここはいくらだったとか。海外にこれから出られる方はぜひそういう情報を収集してきていただけると、すごく財産になると思うんだけど。

堀江(司会)
 そうですね。ぜひ私たちのウェブサイトにお寄せください。