ウェブアーカイブ:第2回HiFサロン(FENICS共催)「フィールドで、性被害に遭ってしまったら」

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Q8. 望まない性交渉があった場合(コンドームなしの場合)、性感染症にかかっているかどうかどのようなタイミングでどう判断すれば(病院に行けば)良いのでしょうか。

吉野先生
 もし心配だったらすぐに行ったほうがいいです。そこで1回検査をして、これも性暴力の時と同じですけど、3週間後くらいにもう1回検査します。変わってるかどうかを比較するっていうのが大事です。ただ、血液検査じゃないとわからないエイズとか梅毒とかそういうものに関しては、保険で検査するのがなかなか難しいんですね。おりもの検査とかでわかるクラミジアとか淋菌とか、そういうものは、うちは保険でやっちゃうんですけど。保険病名つけやすいので。

 エイズの検査と梅毒の検査は、保険でやろうとすると、月々にそんなにいっぱい何人もできませんし、ちょっと病名つけてもそんなにいるはずないので難しいです。その代わり、日本は保健所に行きますと、エイズと梅毒とかクラミジアの検査は無料でやってくれます。匿名でやってくれます。毎日やってるわけじゃなくて、地区で違うので、保健所に問い合わせてからそっちでやってもらったらというようにすすめたりしてます。うちでたとえばエイズの検査やるとすると自費になりますので、6,000円くらいかかっちゃいます。

堀江(司会)
 恐らくこの質問は、フィールドワーク中ですぐに病院に行けないような場合に、自分で判断するようなこともできるのか、ということだと思うのですが。

吉野先生
 いやそれはちょっと…。もちろん性感染症で、おりものの異常だったり痒みとか痛みとか、水疱ができるイボができる、そういう病気もありますけど、例えばクラミジアなんてほぼ無症状です。だから、かかってることに気づかないで、若い子たちの間で今蔓延しちゃってるんです。次々にうつしあっちゃったりするので、今12、3人に1人罹患してるって言われています。20才前後の子たちに非常に多い病気なんですけど、進行しないと症状が出ないんです。進行していくと、お腹の中に炎症が広がって腹痛が出てきたりとか、あとセックス時の出血とかが出てきたりとか。ただ初期っていうか、かかってしばらくは何も症状出ないんです。男性もそうです。だからわからないんですね。そういうのは本当に調べないとわからないです。自覚症状が出るものもありますけど、たとえばヘルペスなんてのはすごい痛いので絶対わかるし、絶対これもう病院に行かなきゃってなるんだけど、何にも出ないものはわからないですよね、自分では。

 

Q9. 結婚・妊娠を考えている場合、普段PMSがあって辛くてもピルは飲むべきではないですか?妊娠しにくくなるとおっしゃっていたので気になりました。

吉野先生
 いや、違うそんなこと言ってないです。妊娠しやすくなるんです。飲んでる間は妊娠しないですよと。もちろん排卵もないですから飲んでる間は妊娠しませんけれども、そうやって子宮とか卵巣をお休みさせた結果、やめた時には非常に妊娠しやすい状態です。だいたい35歳過ぎると女性ホルモンの低下って始まってきちゃうので、35歳過ぎて妊娠は段々難しくなっちゃうんですけれど、ピルをずっと10代20代から飲んでた人は39、40あたりでもぽんって自然に妊娠します。なでしこジャパンのサッカーの澤穂希さんは、37で結婚・出産されてますけど、あの人、ピルをずっと飲んでたので、試合中は良いパフォーマンスもできたし、結婚されてピルをやめてすぐ妊娠したんです。うちの患者さんでも、ピルをやめた翌月に妊娠した人、います。逆に何年か飲んでると妊娠しやすくなるので、不用意にやめちゃうと、中絶なんてことになったりするので気をつけないとだめですね。実際、ピルを取りに来られないあいだに妊娠しちゃって中絶したって子もいたりします。

 飲んでたほうが、妊娠はしやすくします。だから今PMSがあるんだったら、「妊娠して良いよ」「来月妊娠します」っていう時までピルを飲んでおけば良いだけのことです。身体に残るお薬でもなんでもないので。たとえ間違えて妊娠してるのに気がつかないでピル1ヶ月飲んじゃったとしても、全く害はないです。なので、別にそんな危険なお薬ではないので、上手く使って、妊娠しやすい身体を作るためには早くからピル飲むこと。私は、月経来たらピル飲めって今みんなお母さんたちにすすめてるんですけど、そのくらい、何もトラブルがない子でも飲んでたほうが将来妊娠しやすくなるし、あとやっぱり社会に出て生活していくには、月経を自分でコントロールできるっていうのは非常に強みなので、月経に振り回されないで済むからって言ってます。

堀江(司会)
 確認ですが、飲んでいるのと同時並行的には妊娠できないってことですよね。

吉野先生
 そうです。飲みながらは妊娠できないけど、やめた時には妊娠しやすいです。

 

Q10. 万が一海外で性被害に遭って緊急避妊薬を持っていかなかった場合どうしたら良いですか?
特に海外においては低用量ピルの服用または緊急避妊薬の携帯が好ましいとのことですが、万が一海外で性被害に遭って緊急避妊薬を持っていかなかった場合どうしたら良いですか。フランスなど海外では薬局で購入できるとのことですが、現地で探してでも飲んだほうがいいのでしょうか。

吉野先生
 それは飲んだほうが良いと思います。やっぱり妊娠可能年齢なのであればリスクはあるので。閉経しちゃってる後だったら妊娠の心配はないですけど、やっぱり閉経しておらず排卵・月経があるうちは妊娠リスクがありますから、探してでも飲んだほうが(いいです)。探してもないって場合ももちろんあるかもしれないので、そのためには普段からピルを飲むことをおすすめするし、それができない場合は持参して現地に行くことをおすすめします。あらかじめ現地でどういう医療状況かって少しわかると思うので、難しいようなところであればもう日本から持参してくっていうのが一番良いと思います。

 

Q11. 海外で性暴力にあって病院で検査をした場合、日本に帰国後に再度検査は必要ですか?
 性暴力被害後、性感染症検査は2回必要とのことですが、海外で性病の検査をしてとりあえず解決したとしても、再度日本で検査したほうが良いのでしょうか。病院の選び方などありますか。

吉野先生
 感染症には潜伏期間がありますので、性暴力被害に遭った時は1回だけではなく、2回目の検査が必要です。1回やって大丈夫でも2回目やったら陽性ってことあるので、それは2回やったほうがいいです。現地で2回。医療機関がないところだったらもちろん難しいですけど、あればできるはずです。

堀江(司会)
 あんまり時間が空いてしまって帰国するのが何ヶ月も先になって、その時に帰国してから検査となると、あんまり効果がなくなってしまうということでしょうか。

吉野先生
 意味なくはないと思いますけどね。その間に全然治療も何もされてなかったとしたら、それが陽性にまた出てくる可能性がありますから、できる時にはやったほうが良いと思います。ただ、それが性暴力被害に遭ったがための感染だったのかどうかっていうのは、時間が経てば経つほどわからなくなっちゃうわけです。

 

Q12. ピルと緊急避妊薬のお話がありましたが、年齢の低い児童でも同じ対処で良いのでしょうか。

吉野先生
 はい、年齢が低いというか、初経から閉経まで、低用量のピルに関しては飲めるんです。だから月経が始まっていれば、うちは小学生でもピルを出してる子がいます。小学校6年生かな。月経始まって最初の頃って結構重かったりトラブルあったりするんですけど、それで修学旅行あるからとかって困るってことで飲んでる子がいます。なので、初経から閉経まででしたら飲めます。

 月経が始まるっていうこと自体が、ある程度身体が大人になってきてるってことなので、同じ用量で飲むことはあります。ただ大人でも、すごく胃腸が弱いとか気持ち悪くなりやすい方は、半分にして半錠から飲んでみてっていうようなことをしたりすることはあります。半錠の場合は避妊の効果は出ないんですけど、1週間くらい半分で飲んでおくと慣れてくるので、そこで1錠にあげると飲めたりするので、そういうふうな飲ませ方をしたりとかもしてます。

堀江(司会)
 ピルには期限っていうのはあるんですか。

吉野先生
 もちろんお薬には期限はあります。多分袋に書いてありますけどね、それぞれ。そんなにすぐにダメにならない。2年か3年は大丈夫だと思います。

 

Q13. 大変勉強になりました。アメリカでは性暴力被害に遭った場合病気を防ぐために加害者にコンドームを使わせることがあるとおっしゃっていましたが、日本でもしそうすると、訴えた時に不利になったりするのでしょうか。

吉野先生
 日本の司法は、本当に全然被害者に寄り添ってないので、コンドーム持ってたっていう時点で同意したってふうに取られちゃったらそれは不利になるかもしれないですね。ただやっぱり、病気にならないためには(必要)だし、そういう場合、裁判に産婦人科医が一筆書いたりとか意見書出したりとか、そういうこともできるので、そういうのにも利用していただけたらと思います。

 さっきの富山の種部先生は裁判に何回も同行してますからね。多分、被害者の証言までしてるんです。あの人は本当に性暴力被害者の専門家と言っても良いのかもしれないけど、ちょっと今県議会議員になってしまったのでお忙しくて、臨床もやりながら県議会議員を富山でやってます。富山はずいぶん医療、変わってきてるんですよね。あの人は医療の中でやってても変わらないからって、政治が動かないとダメだっていって政治家になっちゃったんですけど、軸足は医療なので、富山の医療は今すごく、女性医療が変わりつつあります。東京だとね、人数も多過ぎるし規模も大き過ぎるので1人が動いたからって何もあんまり変わらないんだけど、地方都市は1人動くとすごく変わります。

 

Q14. 性被害のうち精神的な被害に関することですが、たとえばもし周りにそのようなことで苦しんでる人がいた場合にどのような対処をしたらいいか、アドバイスはありますか。

吉野先生
 やっぱり被害に遭ったってだけじゃなく、それを打ち明けられた側っていうのも非常にショックを受けたりとか、気持ちが沈んだりとかね、そういうメンタルの不調をきたす人も中にはいるかもしれない。なのでまずその被害に遭った方も、話して良い相手っていうのを選んでるはずなんですね。だって言いたくない話ですから、それを打ち明けるっていうのは相当な信頼関係があったりとか、その人のことを他者に簡単に言ったりしないだろうっていうことでお話しされると思うので。

 話されたほうは、もし、それを聞いて自分が保てなくなるかもしれないとかっていう場合は、その場で、「やっぱりちょっとごめんね」って言って、「それは私では聞けないからちゃんと聞いてくれるところがあるから」と言って、そういう専門のワンストップセンターとか、そういうところ相談のダイアルとかを教えてあげるとか、そういう風にする。

 ただ聞くだけなんです、結局。余計なことは言わなくて良いんですよね。あなたも注意が足りなかったのよ、なんてそんなの最悪のセカンドレイプですし、そうじゃなくてただただ寄り添って辛かったよねそうだよねって、聞くだけです。もちろんカウンセラーとか専門家ではないので、そこでなんとかしてあげようと思わない方がいいですね。何にせよ専門家に繋ぐという役目をしていただければ、カウンセラーでも良いですしワンストップセンターとかそういう性暴力被害のセンターとか色んなとこありますから、そういうとこでちょっと話してみたらどう?というふうに持っていくのが一番かなと思います。