ウェブアーカイブ：第2回HiFサロン（FENICS共催）「フィールドで、性被害に遭ってしまったら」

3．緊急避妊について

3-1．緊急避妊ピルってどんなもの？

　ここからは、緊急避妊のお話を詳しくしようと思います。コンドームは日本では避妊の道具だと思われてますけど、実は性感染症の予防のための道具であって、避妊の効果はそんなに高くはないんですね。失敗率は非常に高いです。何も避妊しないでレイプされたなどの場合は、3日以内にホルモン剤（黄体ホルモン）を一回飲むということで済みます。8年くらい前にやっとこのお薬が日本で認可になったんですね。それまでは、緊急避妊薬って日本では一応ないことになってて、黄体ホルモンと卵胞ホルモンが両方入ったお薬を流用して、産婦人科の責任で出しなさいっていう国の方針だったんです。だから2回飲むっていう、もしかして飲んだことある人いるかもしれないけど、非常に気持ちが悪くなる薬です。これを一回飲んで、12時間後にもう一回飲まないといけなくて、それで一応緊急避妊ということにする、「ヤッペ法」というやり方です。ですが、この黄体ホルモンのお薬が出てからは、黄体ホルモン単剤ですので、気持ち悪くなることがない、副作用が少ないということで、非常に飲みやすい薬になってます。認可されるのにものすごい時間がかかって、海外なんかでは薬局で売っているくらいのものを、日本ではなかなか認可にならなかったんですね。それで、認可にはなったんですけど、値段が高いんです。3～4年前にジェネリックが出たのでちょっと値段が下がりましたけど、仕入れ値が一粒で10,000円くらいしちゃうんです。そうすると、それを出す時は15,000円とか20,000円になっちゃいます。高校生とか若い子たちが簡単に手を出せる値段じゃないので、どうかと思うんですけど、そういう値段をつけるんですね。こういうものが海外では安いんです。それは国がお金を出すからなんですね。別に製薬会社が国によって値段を変えているわけじゃなくて、国がお金を出しているから安くなる。日本は、そういうところには国が一切お金を出しませんので、海外に比べれば、日本の女性の健康のためのお薬は非常に高いです。東南アジアとかに比べても高いです。

3-2．緊急避妊ピルの値段は？飲む時期は？：おすすめは低用量ピルの常用内服

　緊急避妊ピルは、いつでも効くわけではありません。ご存知の通り、妊娠しやすい時期というのがあります。妊娠は、排卵して、その卵が精子と出会って受精卵になるということで成立するので、たとえば月経の直前で、もう排卵も終わって大分時間が経ってるという時であれば、妊娠の確率は低くなるわけですね。なので、もちろんお薬を飲めば確実に避妊にはなります。だけど、ちょうど排卵期の前後だとすると、このお薬を飲むことでちょっと遅らせることはできるんですけども、もしすでに排卵が起きてしまっていたら、そして性行為が排卵の直後だったら、やっぱりそれは危ないです。薬を飲んでも妊娠してしまうということになります。

　たとえば、ノルレボというお薬（緊急避妊ピル）があります。1.5ミリの薬です。今ジェネリックが出ましたが、でもジェネリックも仕入れ値が5,000円以上はするのかな、なので8,000円から15,000円程度です。だから、これを緊急的に飲むというよりは、私たちは普段から、若い方は低用量のピルを常用することをすごくおすすめします。特に海外にフィールドワークに出かける方は、早いうちからピルに慣れておくほうが良いと思うし、月経のコントロールができますから非常に便利です。緊急避妊ピルを飲むときに大事なのは、「最後の月経がいつだったか」、「それに対してセックスがあったのはいつなのか」、「それは月経が始まった日から何日目か」、そしてそれによって「排卵に近いか排卵がもう終わっているか」を判断すること。それによって全然変わっちゃいます。なので緊急避妊すれば絶対大丈夫ってことではなく、やはり普段からそういう目に遭った時に妊娠だけは絶対にしないようにっていうことであれば、そしてもちろんそれだけのためでなくても、低用量のピルを飲むのはおすすめです。

3-3．妊娠から出産までの期間は意外と短い：日本で中絶できるのは21週6日目まで

　実は、セックスがあってから妊娠・出産するまでって意外と短いんです。日本って「十月十日」って言葉があるので皆さん勘違いされてる人多くて、特に若い子たち全然知らないです。たとえば、3月18日に最終月経があったとして、そして4月1日エイプリルフールの日にセックスがありました。そしたら4月の予定の時に生理が来ない。生理不順の子たちだと全然来なくても驚かないので、2、3ヶ月放っておいたりする人もいるんですけど、でも毎月来ている人は1ヶ月後に来ないと、「あれ、生理来ない。変だな」と。で、5月に入っちゃったと。「おかしいな、もしかしたら妊娠かしら」と思って調べたら陽性だったと。で、どうしようどうしようと言っているうちにもう6月になってしまって、病院に行ったらもう「あなた、妊娠3ヶ月ですよ」と言われたと。段々そのうちお腹も大きくなってくるし、産むかどうするか、中絶するか、どうしようって言ってるうちに、あっという間にお盆になってしまいました。そしてもう妊娠22週になってくると、中絶という選択肢がなくなるんです。日本は中絶が合法的に行われる国ですけども、中絶可能なのは妊娠21週までなんですね。このことを意外に知らないというか、若い子たちは全然知らないので、それで機を逃してしまって、中絶できなくなった、産むしかないってなる人たちも、毎年結構出てます。この22週になってしまって、もう産むしかないですよって言われて、じゃあいつ生まれるの？っていったら、もうクリスマスには出産なんです。だからエイプリルフールのセックスでクリスマスには生まれちゃうんですよ。春じゃないんです。もう12月のうちに生まれちゃいます。意外とここが短いということと、中絶できるのは21週までということは知ってないといけない。21週、1週間は7日ですから21週6日までですね。22週ゼロになった途端に、中絶はアウトです。日本はまだ堕胎罪というのがあるので、22週で中絶をしたら医師も逮捕されますし、もちろんご本人も逮捕されるということになってるんです。