背景と目的

 HiF(Harassment in Fieldwork)は、複数分野の研究者からなる有志の共同研究です。本プロジェクトの母体となったのは、北海道大学を代表機関として、東北大学、名古屋大学と協働して取り組んできた博士研究人材育成を目的とした若手研究者育成事業(平成26年度文部科学省「科学技術人材育成のコンソーシアムの構築事業(次世代研究者育成プログラム)」に申請・採択)で実施された異分野連携推進のための勉強会でした。そこで出会ったフィールドワーカーたちが、フィールドワーク中のハラスメント被害の体験を語りあったことがきっかけとなってHiFの活動が始まり、その後、複数大学の有志が集まり、現在にいたります。

 私たちは、フィールドワーカーが安全にフィールドワークを行うことができるように、フィールドで直面しうる危険や問題について情報を収集しています。それを通じて、フィールドワーカー個々人および研究機関や学会等の注意を喚起し、安全対策の実施を促進させることを目的としています。そのために本サイトは、その成果、関連する活動について情報を共有し、可視化するアリーナを提供したく思っています。

 これまでは、調査者が被調査者を一方的に調査し表象する非対称な権力関係や被調査者のプライバシー保護等の倫理的問題が議論されてきました。しかし、フィールドの人びとと信頼関係を築く中で、フィールドワーカーが身体的・構造的に弱い立場に置かれてしまうこともあり、そういった場面でフィールドワーカーが直面する危険や問題、またそれらへの対処法はあまり取り上げられてきませんでした。

 フィールドワーカーが調査中に遭遇した危険や問題を分野や学会を越えて把握する試みは、これまで日本では行われてきませんでした。そのため、まずは問題や被害の実態把握を行う必要があり、本共同研究では上記のような活動に取り組んでいます。

 フィールドワークは学問の発展につながる知見をもたらすだけでなく、フィールドワーカーの人生を豊かにしてくれる営みです。しかし、フィールドという特殊な社会空間で生じる様々な危険が、フィールドワーカーの人生を大きく左右することもあります。フィールドワーカーが、そしてフィールドワーカー育成に関わる諸個人・機関がそのような危険にできる限り遭遇しないよう万全な対策をし、また万が一遭遇してしまった際に適切な対処ができるように、本共同研究は模索を続けています。

本共同研究の主旨に賛同し、上記の活動にご協力してくださる皆様に感謝いたします。