空港にて受ける可能性のあるセクシュアル・ハラスメントの事例

キーワード
ハラスメントの種類:セクハラ/性暴力
当時の加害者の属性:見知らぬ人、空港職員
当時の被害者の属性:学生、男性
フィールドワークの種類:留学
内容:体験の内省・振り返り、事前準備・対策

I 空港で受けたセクシュアル・ハラスメントの事例

これは、男性による男性へのセクシュアル・ハラスメントの例です。私が留学中に、私の婚約者に会いに隣国まで行った際に、現地空港で手荷物のバックパック一つでパスポートコントロールを抜け、搭乗前の手荷物検査場へ移った時に起こりました。

国際線がある空港とはいえ、地方の小さな空港でしたので、手荷物検査場にいたのは、若い男性の検査員が2人、女性の検査員が2人だったと思います(2人とも若い女性に見えました)。そのうちの1人の男性検査員が私のバックパックを指差して開けるよう指示してきました。これ自体はよくある話ですので、検査員の指示に従いました。

私が、バックパックから荷物を取り出してみせて、これは衣服で、これは友人へのお土産で、といった具合に説明をしていると、検査員の1人が洗面用具の入っていた小さなバッグを手に取り、中を開けて、そこに入っていた避妊具(コンドーム)を取り出し、私やその場にいる他の検査員に見せびらかすようにして、「これは何だ?」と聞いてきました。

明らかにからかっている様子でしたので、私は不快に思い、真面目な顔で「コンドームですよ」と答えたところ、続けて「何故だ?」と質問されたので「婚約者に会いに行くんだよ」とぶっきらぼうに答えました。

その男性検査員は、私の答えを聞くと、にやけながらコンドームを持って、もうひとりの男性検査員に話しかけていました。その短い会話の間、彼はコンドームの包装を、女性検査員にも見えるようにひらひらと動かしていましたが、女性検査員は笑いもせず、それから顔を背けていました。

空港の男性検査員の嫌がらせは、わざわざ私の口から「コンドーム」あるいは「避妊具」と答えさせようとする、幼稚な嫌がらせでした。私への性的なハラスメントにも腹が立ちましたが、彼が同僚の女性にコンドームの包装を見せつけるようにしていたことのほうが、記憶に残っています。性的な話題(猥談を含む)を、それを望まない人に向けるというのは、明確なハラスメント行為の一つであり、この男性検査員によって自分の所持品が彼の女性の同僚に対するハラスメントにも利用されたことも私にとってはショックでした。

II 反省と予防・対処

今思えば、少しお金がかかるとは言え受託手荷物にすれば、このような嫌な思いはしないで済んだのかもしれません。あるいは、空港職員からの質問とはいえ、コンドームの使用目的を尋ねるというのは、ただの嫌がらせに過ぎないのですから尋ねられても答えないという選択もあったと思います。

なお、Iで私が空港職員の男性によるハラスメントに応答した際は、現地の公用語ではなく、その地域の口語として普及している言語を用いました。これは私が現地公用語よりも、こちらの言語の方が得意だったからで、怒りを伝えるときは、日本語あるいは自分が最も得意とする言語で話すと良いと私は考えています。これは、相手に自分の怒りを理解してもらうためではなく、自分自身の精神的苦痛を和らげるために重要だからです。

また、空港のように職員(検査員含む)に大きな権限が与えられている場所で、職員からハラスメントを受けた場合は、決して感情的にならず、しかし弱気にならず、落ち着いて対応することも大切です。自分が搭乗するフライトの時間もあるので、あまり事を荒立てずに、場合によっては後日正式にクレームを空港施設などへ提出することも検討するべきだと思います。